このネット競馬で投稿された日記で、『名馬を読む』シリーズの第4巻が出ているのを知り、購入して読んだ。
本書の中の、トランセンドというダート馬の話を読み、涙が出た。トランセンドは2011年のドバイワールドカップの出走馬。あの東日本大震災があった直後に行われたレースだ。そして日本の馬、ヴィクトワールピサが勝ったレース。トランセンドは2着だった。あの頃は競馬からは離れていたが、翌日の新聞に、
「日本のみなさん、日本の馬が勝ちました!」という大きな見出しと、現地の日本チームのみなさんが日の丸を掲げている写真が載っているのを見た時に、胸が一杯になったことを思い出したのだ。
当時はまだ鎌倉の海っぷちに住んでいたので、震災直後はいつでも津波から逃げられるように、ダウンジャケットを着て寝ていた。そして原発事故という深刻な二次災害の影響で、計画停電が行われた。電気が使えない朝は湯たんぽを抱えて朝食を食べ、江ノ電が走っていないのでバスで鎌倉駅まで出た。信号も止まるので、警察が出動して交通整理をするという見慣れない町の光景も目にした。そして夜に計画停電になると、鎌倉の町は闇に包まれ、懐中電灯で足元を照らしながら家路を急いだ。本当にあの夜道は恐怖だった。更に放射能が千葉まで流れてきたというニュースがあり、暗澹たる気持ちになった。東北の人たちほどではないが、関東の人間も、あの震災で一時期日常を壊された。そんな中でのドバイワールドカップの日本馬の勝利のニュースだった。こんなに心救われたニュースはそれまでに経験が無かった。
本書を読んで改めて、ヴィクトワールピサとトランセンド、そして2頭の関係者のみなさんへの感謝の気持ちが蘇った。
本書を読んで良かった。
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