今日は花冷えも花冷え、冬に逆戻り。セーターを着て映画『教皇選挙』を観てきました。今年の米アカデミー賞の脚色賞受賞作品です。
教皇が急死し、次の教皇を決める選挙、コンクラーベが行われることになり、首席枢機卿のローレンスがコンクラーベを仕切ることに。次期教皇の座を巡り、カトリックの重鎮たちの思惑が錯綜します。明らかになる秘密、謀略、不祥事・・・。コンクラーベの行方は如何?・・・というお話。
ある世界の闇を描いた人間ドラマのサスペンスといったジャンルの映画です。
リベラル派の枢機卿、伝統主義の保守派の枢機卿、黒人の枢機卿といった、正に現代の多様化を具現化したような登場人物たち。今時の優等生な説教クサイ映画と違って、多様化が素晴らしいと主張していないところが好感持て、また考えさせる要因にもなっていました。どの考え方が正しいとかではなく、様々な価値観の人間たちが各々の考えで動き、抜きつ抜かれつして教皇の座を争う様子が静かにスリリング。そして最後に勝つのは誰か?その人物も正に多様化の象徴のような人物なのですが、その人物を教皇にすることによって、カトリックはまた大きな秘密を抱えることになるのだなと、鑑賞後は何とも言えない余韻が残りました。
米アカデミー賞脚色賞受賞だけあって、脚本が良く出来ていますが、その脚本に的確に応えた俳優たちの芝居も上手い。そしてカトリックの総本山システィーナ礼拝堂が舞台だけあって、神の存在を示すようなシーンがあるのですが、それがさり気ないながらもインパクトのあるものになっていて素晴らしかったです。神の存在を信じない私でさえ、“神”の意思を感じて、畏れるような気持ちになりました。
そして帰り道は、「カトリックの世界も、競馬の世界も、そして私がいる世界も、結局皆同じなんだな」と、つくづく思いました。人間集まって一つの組織になったら、それぞれの人間が自分の欲と保身のために動き、争うことになる・・・。人間は汚い生き物。だけどそこが面白いんだな。スリリングなんだな。
本作の中で「我々は聖人ではなく、理想に仕える人間なんだ」というようなセリフがあるのですが、この映画の一つのテーマかなと思いました。崇高な枢機卿も教皇も所詮人間であるというのが作品のコンセプトになっている気がしました。
キレイゴトではない“多様化”を表現した映画、オススメします。
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